個人様導入事例とリハビリ事例
ほぼ終日ベッドまたはティルト式車椅子で過ごされています。
週5日のリハビリおよび嚥下訓練を継続しており、
その一環として2024年10月より理学療法士が介助および誘導をしながら
スペースワンダーを用いた機能訓練を実施されています。
2024年9月にヒアリングとデモを実施し、奥様、担当理学療法士(以下PT)、
テクノブレインの三者間で意見交換を重ねた結果、
同年10月にスペースワンダーの導入に至りました。
導入から9か月が経過し、奥様に連絡を取り使用状況や健康状態を伺ったところ、
H様の身体・精神面で顕著な変化が見られたとの報告を受け、
訓練のご様子を見学するため訪問させていただきました。
①長期臥床により、座位での正中(体の中心)の認識がうまくいかなくなっており、免荷されていても重心が後方に傾いておられました。
②③PTの方がH様の膝を自分の膝で抑え、左手で右の腋窩(わき)、右手で背部を支え、起立させようとしますが体幹が後方へ突っ張ります。
④後方からも支えますが膝が伸展せず立位までには至りませんでした。
①スペースワンダーを装着しての座位姿勢維持および起立訓練のご様子です。
2024年9月の時と比較すると、体幹の後方への突っ張りが目に見えて軽減しており、PTの方がハーネスの一部とH様の右手を把持して介助することで、座位での重心がうまくとれていました。筋力や安定性の向上により、スペースワンダーを着用した状態での座位姿勢がここまで改善されていました。
②また起立動作の訓練では、PTの方が膝を屈曲方向に力を加えた反射で、H様ご自身も膝を伸展させたりと、協力動作が以前より強化され、写真のような介助付きの立位保持を5秒~10秒程度維持する訓練を繰り返されていました。
※比較しやすくするため左の写真を左右反転させています。
2024年9月
2025年7月
今回ご協力いただいた「AViC THE PHYSIO
STUDIO」の理学療法士の小井詰さんにリ
ハビリ開始当時と現在の介助の負担の変化について伺いました。
「全然違いますね。最初は膝を当てて、両腋窩を抱えて上下に揺らすところから始めました。
それが今では、私が膝関節の屈曲の刺激を入れて、誘導するとご自身でも膝を伸ばして立ってくれます。」と当時の支持の仕方を再現しながら答えてくださいました。
そのため車椅子からベッドへの移乗時も同様に介助が楽になったそうです。
※比較しやすくするため左右写真を左右反転させています。
2024年9月
2025年7月
起立動作訓練では、安定性の向上や協力動作の強化だけでなく、H様の表情などにも変化が見て取れました。
2024年9月の映像では、起立させようとすると、不安そうな表情と言動があり、痛みに顔をゆがめ声を出す場面が見られましたが、今回は終始、力強い表情で痛みを訴えることなく訓練を行っておられました。
2024年9月
2025年7月
以前は端座位を保つ場合には腰を落として両手でしっかりとH様を把持していたそうですが、それでもH様の後ろに突っ張る力が強く負けそうになってしまったり、その結果H様のお尻が前にずり落ちてしまいそうになることがあったそうですが、現在も突っ張りはあるものの、片手で支えられるようになりました。
左の以前の写真では踏ん張りながら両手でH様を支えておりますが、右の現在の写真ではお二人ともに安楽な状態なのがうかがえます。
麻痺側下肢は手で前へ
健側下肢は随意的に前へ補助的に後から軽く蹴られる
スペースワンダー導入後、その他のリハビリの効果を含め、安定性などが向上したことから、
新たに装具の作製や福祉用具の導入がされ、全介助での歩行訓練を開始するまでになりました。
日によって違いはありますが、スペースワンダーでの訓練を15分程度行ってから歩行訓練に入っているとのことです。
歩行訓練中の麻痺側下肢に使用している装具は膝上まであり、ご自身で力を入れなくても膝関節伸展位を保てるため、
歩行の中で体幹や股関節周囲の筋に収縮を入れるのには適している反面、下肢自体を使うことが減り、それを長期にわたり続けてきたため、自分で膝を伸展させる力が弱くなってしまったこともあったとのことです。
そこを見直し、現在はスペースワンダーでの訓練と装具を付けての歩行訓練をバランスよく行っているそうです。
リハビリの機器を導入しようと複数のメーカーに問い合わせたのですが、「医療機器なので個人には販売しない」といわれ続けていたので、話を聞いていただけるだけでもすごいのにスペースワンダーのデモ機をもってきてくださったことにも驚きました。
本人も立つことを望んでいるので、なんとか立たせたいなと思い導入することになりました。
導入したての頃、本当に「楽しい楽しい」と言って取り組んでくれました。
おそらく設定されていた顧客層とはちょっと違うなっていう気がしたのですが、「こういう使い方もできるんだ、適切な知識と技量を持っている方がサポートすればできるんだな」と思いました
端座位がきれいになりました。前は後ろに突っ張っちゃって、倒れこみましたが、最近は全然そういうのがなくなりました。
5月からはデイサービスへの通所も始まり、そのおかげもあってかコミュニケーション能力が飛躍的に改善し、デイサービスで人気者になっているようです(笑)また嚥下訓練もスペースワンダー後の方がスムーズで、その流れで実施し、最近ではしゃぶしゃぶのお肉などの固形物も食べられるようになりました。
先日は花火大会を会場付近の店舗から鑑賞して、とても幸せそうに「本当に幸せだもん」と笑顔で言ってくれて、あーよかったなと思いました。
スペースワンダーでの全身運動が発端となり回復してきています。
ありがとうございます。
今回、H様のリハビリを見学し、日ごろ自分自身が、そして私が勤務するデイサービスでのご利用者が行っている「立つ」「歩く」という動作がどれほど重要で、重い疾患を抱えている方にとって大変な動作かを改めて考えさせられました。
また、スペースワンダーがそのような方のリハビリのお役に立てていることが嬉しい反面、小井詰様のご指摘の通り、有効な使用方法を私たちメーカーが今回のような機会から学び、伝えていくことが重要だと感じました。
これからもご利用者の皆様、そのご家族や支えていらっしゃる方々から成功した事例や、こうして欲しいなどのご要望やご意見を参考に、より多くの方々の運動、リハビリに役立てるように精進していきたいと思いました。
最後に、今回H様の回復のご様子を見学させていただき、訪問した私たちもとても嬉しかったのですが、最後にもう一つ嬉しいことがありました。
リハビリが終了し、H様に挨拶して帰ろうとしていると、H様が奥様に「今日は楽しかった」と感想を述べて下さったのです。
リハビリのお邪魔なのではと心苦しく感じていたのですが、私たちの訪問がH様の励みになることができたようでホッとしました。
今後もH様の運動ができる楽しみと回復を感じる喜びに寄り添えるように頑張りたいと思います。
そして、また見学に伺わせていただきたいと思います。
H様、奥様、小井詰様、改めましてこの度は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。